みなさんこんにちは。

 

報道では、花粉症のお薬や湿布薬など、市販で手に入るものが保険適応から外れる可能性があるようですね。

症状がひどい方はやはり医療機関での対応が必要だと思うんですが、その線引きはどうするんでしょうね???

 

いまや日本人の4人に1人がスギ花粉症に悩まされていると言われますが、花粉症や通年性アレルギー性鼻炎は根本の「治療」ではなく、「症状を軽く」しているだけにとどまっていることがほとんどです。

 

「舌下免疫療法」という治療をご存知でしょうか?

本邦では、2014年にスギ花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)に対して、2015年にはダニを原因とする通年性アレルギー性鼻炎に対して開始されました。

これはアレルギーの原因となっているアレルゲンを微量ずつ投与することで、体をアレルゲンに慣らす治療法です。

 

☑舌下免疫療法の対象となる方

スギ花粉症ダニによるアレルギー性鼻炎が適応となります。

当院では問診や血液検査で診断しています。

特に、複数の併用薬でコントロールが不良な方、眠気などの薬の副作用が強い方、若年者(5歳以上)にお勧めであると言えます。

 

☑治療の実際

1日1回少量から服用を開始します。

舌の下に含んで溶かす形で内服し、一定量を長期にわたって継続するのですが、推奨は3年以上と言われています。

シダキュア

シダキュアを飲むみなさんとおうちの方へ 鳥居薬品より

 

また、スギ花粉症の治療におきましては、スギ花粉が飛んでいる時期に開始することができません。ダニはいつ開始しても構いませんが、スギは11月いっぱいまでに開始するのが良いとされています。

 

☑効果

目・鼻・皮膚のアレルギー症状を緩和できる可能性があります。

舌下免疫療法のご経験が豊富な三重県の湯田先生のご報告では、スギ花粉症がほぼ根治できたのが15%、効果がなかったのが10%、残りが何らかの効果が得られたとされています。

ただ、「〇%で症状が完全に消えた」とか「△%は全く効かなかった」といったわかりやすいご案内ができればいいのですが、なかなかそこまで大胆な表現ができません。

そこで、論文を検索して私なりに期待できる効果をご紹介します。

 

以下、ややこしい話になります。

読み飛ばしてもらっても構いません。(笑)

下の論文からご説明いたします。

SLIT

こちらでは、33か月間治療したグループ、前半15か月間だけ治療したグループ、後半18か月間だけ治療したグループ、まったく治療しなかったグループで比較検討されています。

TNOSMS

↑のAA(治療33か月間)とPP(無治療)のグラフを比較してもらうとわかりやすいと思います。TNOSMSというスコアリングで目や鼻の症状の強さと薬の必要性を評価していますが、統計学的に有意な改善があります。

SLIT rescue med

また、3シーズン目の花粉飛散期に応急的な薬を使わなくて済んだ確率は、治療しなかったグループよりも33か月間治療したグループの方が3.47倍高かったとされています。

さらには、治療薬の投与が7日を超えなかったかどうかに関しては、5.38倍も高かったとあります。

(ただし、統計学用語の解釈において、あえてわかりやすくするため若干の語弊を含みますことをご了承ください。)

 

☑副作用

主な副作用は口の症状です。口や喉のかゆみや不快感はよくある副作用です。

アレルギー症状全般的に起こりうる可能性がありますが、全身性の症状(ショック、アナフィラキシーなど)が発現することはきわめて稀だと報告されています。

 

☑費用

保険適応の治療ですので、

医療証のあるお子様は通常の上限額

3割負担の大人の方で、おおよそ月あたり2000-2500円の自己負担となります。(個人差があります)

 

☑通院

原則として月1回の通院が必要です。

ただし、治療対象となる患者様は学校やお仕事で忙しいケースが多いと思います。

治療開始時は必ずご来院いただきますが、当院ではオンライン診療も行っております。

診察時にオンライン診療用の再診コードをお渡ししますので、ご活用ください。

通常の御来院よりも月当たりの負担額は数百円程度増えますが、ビデオ通話での診察および薬の郵送が可能ですので、御通院の負担が軽減されるのではないかと思います。

 

 

ちなみに、万が一花粉症の薬が保険適応から外れることがあったとしても、舌下免疫療法は間違いなく保険適応なはずですのでご安心ください。