みなさんこんにちは。

「自閉症」ってご存知でしょうか?私はネーミングが良くないと思うんですが、これは決して性格が暗くて殻に閉じこもっている人のことを指すわけではありません

私の長男は自閉症です。いま特別支援学校の小学1年生です。とびきり陽気な性格です。笑

当院では前院長の羽場先生や2名の臨床心理士がそのようなお子さんにも対応しておりますが、今回私は専門医としてではなく、あくまでひとりの父親として自閉症を勉強したレベルで書いていることを前提としてください。お父さんお母さんは同じ目線でお読みいただければと思います。

 

自閉症とは主に以下の3点を特徴とする症候群とされています。

1.対人相互反応の質的な障害

2.意思伝達の著しい異常またはその発達の障害

3.活動と興味の範囲著しい限局性

と言われてもわけわかりませんよね?笑

乱暴に噛み砕きます。

1.→対人関係がうまく形成できない

2.→言葉が遅れる

3.→好みやこだわりが極端に強い

でも、それが自閉症です!と言われてもピンときませんよね?

それもそのはず、自閉症というのは診断が非常に複雑で難しいんです。(個人的には診断なんてどうでもいいと思っています。)

 

長男を例にしてみます。

●~1歳 

親が離れても泣きもしないし、おとなしく一人で遊んでいられる「手のかからない子」だと勘違い。笑

ばぶばぶ程度の喃語はあった。

くるくる回るおもちゃや車輪・タイヤに異常な興味を示した。

●~3歳

よく笑うし愛想も悪くないが、同世代の輪に入るのを嫌がる。NHKのこども番組に発狂してビデオデッキを床にたたきつけたことも。笑

有意語らしいものはひとつもなし。「宇宙語」をひたすら復唱。

プラレールやミニカーなどお気に入りのおもちゃを独特なアングルから眺めながらひたすら動かして遊んでいた。

●~小学校入学

発達支援センター(発達にハンデのある子の幼稚園、のような感じでしょうか?)で園生活を送る中で少しずつ「他人」というものに興味を示すようになる。それでもお遊戯などに加わるのは好きじゃない。

言葉は家族だけが聞き取れるような有意語が少しずつでてきた程度。

道路標識に異常な興味を示すようになり、急に車道に飛び出して肝を冷やすこともしばしば。

●小学校入学後~

以前よりは少しだけ集団生活を楽しめるようになる。ただし学校などルーティンの活動のみ。

誰でも聞き取れる言葉が増えてきた。ようやくパパ、ママと呼べるようになる。エレベーターやインターホンに異常な執着をみせるようになる。

 

これはあくまで1例であり、自閉症と言われてもそれこそ十人十色です。

スマホに子守を

では、本題に戻ります。写真のポスターは小児科医会のものですが、「スマホに子守りをしてもらう」ことも悪くない例を挙げておきたいのです。

育児は労力と精神力と時間とお金と…大変ですよね?それはいつの時代だってそうだったかもしれませんが、スマートフォンやタブレットといった文明の利器を一概に悪者扱いすべきではないと思います。(誤解のないように記しておきますが、このポスターがスマホを悪者扱いしていると非難しているわけではなく、そう誤解される可能性があるから、というニュアンスです。)

 

まさにウチの長男なのです。自閉症児にありがちなのですが、スマートフォンやタブレットのパスワードや操作法をすぐに覚えてしまうので、小さい頃からタブレットでお気に入りの動画やアプリを延々と見続けるんです。

2歳過ぎから発達に怪しさを感じ取った我が家では、3歳くらいから長男に対して療育というものを始めました。主にインターネットでの情報をもとに色々な会に参加し、いくつかのやり方を試し、何とか集団生活ができたり言葉が出たりしてくれないかなと苦心しました。

1年以上試行錯誤する中でようやく長男に合っていそうな手法に出会いました。それは、本人の興味ややりたいことをほぼ100%尊重する伸ばし方です。療育には、技を教え込むがごとく厳しい教え方をするやり方もありますが、その真逆をいくものですね。

具体的には、「どんなデタラメな言葉を発しても訂正せずにそれを復唱してあげる」とか「多少好ましくないものでも本人の行動をマネしてあげる」といったものです。そうすることで、自分がとった行動で他人が反応する喜びを教えるのが目的だと理解しています。

 

ようやく本当に本題に戻りますが、タブレットが大好きな長男は、制止しなければごはんやお風呂、トイレや睡眠以外はタブレットで遊び続けるのではないかというくらいです。我が家が出会った療育法の大半は、時間を区切って遊ばせましょうというものでしたが、ある時からほぼ無制限にタブレットを与えました。正確には抑止できなかったのかもしれませんが…笑

 

そうすると、全然言葉の出なかった長男から、「何て言ってるかわからないけど、よくそれ言ってるなあ」という言葉がどんどん増えてきて、そのほとんどがタブレットの中に答えがあるんです。自分の興味のあるものを何とか言葉にしたくて頑張るんでしょうね。言葉が出るためには、まず本人がそれに興味を持って、かつそれを誰かと共有したいと思うことが重要なんだなと改めて思いました。そうこうしているうちに、最近では音声検索も使うことが多くなり、何とかタブレットさんに聞き取ってもらおうとしています。笑

あれほど頑張って言葉を「覚えさせよう」としていたのが何だったのか?というくらい、爆発的にタブレットから言葉を吸収するようになってしまいました。完敗です。笑

 

長男の例は当然ただの一例にすぎませんので、全員にあてはまるわけではありません。ただ、十人十色だからこそ先入観や偏見を捨てて、健常であろうと発達障がいであろうとその子をよく理解して育児や療育をしないといけないんだなと思います。

 

お父さんお母さんの中には、「スマホ、タブレット、ビデオ…に子守りをさせてしまってるなあ」と罪悪感を感じておられる方も少なくないようですが、意図的にそれらを利用するのであれば問題ないように思います。また、そこまでちゃんと考えておられる方は、お子さんとのコミュニケーションを軽視するようなこともないでしょうしね。

 

長くなりました。最後までお付き合いいただいた方はありがとうございました。